不動産お役立ちコラム
市街化調整区域の空き家特例:既存空き家を誰でも住める住宅に転用する制度

目次
空き家特例とは?市街化調整区域の空き家が「誰でも住める住宅」に生まれ変わる制度
近年、日本全国で深刻化している「空き家問題」。特に農村部や郊外の市街化調整区域においては、人口減少や高齢化により空き家が年々増加しています。人が住まなくなった住宅は老朽化が進み、倒壊や治安悪化、景観の悪化など地域全体にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
「空き家特例」とは、市街化調整区域内にある空き家を、誰でも居住可能な一般住宅に用途変更できるようにする制度です(city.naka.lg.jp)。市街化調整区域は本来、都市的な開発を抑制するエリアであり、新たな住宅建築や用途変更には厳しい制限があります。しかし近年、人口減少や高齢化で農村部の集落に空き家が増え、地域コミュニティの維持が課題となっています。国土交通省は2016年以降、都市計画法の運用指針を改正し、空き家となった古民家等を地域資源として活用するための用途変更許可を柔軟に認めるよう技術的助言を発出しました。この弾力運用により、例えば既存の空き家を観光振興目的の民宿やカフェにしたり、移住促進のための賃貸住宅に転用したりすることが可能になっています。各自治体はこの国の方針に基づき条例を整備し、空き家特例制度を導入しています。令和6年(2024年)4月1日から、茨城県那珂市でも制度が導入され、一定の条件を満たした空き家については、誰でも住める家として再活用できるようになりました。本記事では、この制度の内容やメリット、手続きの流れ、利用上の注意点について、不動産会社の視点からわかりやすく解説します。
空き家特例の背景:なぜ制度ができたのか?
市街化調整区域は、もともと「農地や自然環境を守るためのエリア」です。新規に家を建てることは原則禁止され、住めるのは「農業従事者の住宅」や「分家住宅(親族用)」など、限定されたケースに限られていました。
ところが、人口減少や高齢化の影響で、農業をやめた世帯や親世代の住まいが空き家となり、地域に放置されるケースが急増しています。国土交通省もこの課題を重視し、2016年以降、空き家の用途変更について柔軟に認める方向で技術的助言を出しました。
その結果、自治体ごとに条例を整備し、「空き家特例」として制度化が進みました。那珂市も条例を改正し、地域コミュニティの維持と空き家活用を目的に制度を導入しています。
適用条件:どんな空き家が対象になるのか?
空き家特例の適用を受けるには、厳格な条件を満たす必要があります。対象となる空き家は、おおむね以下の要件に該当する住宅です:
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市街化調整区域内に所在する戸建住宅で、もともと「農業従事者の住宅」や「分家住宅(親族のための住宅)」など一身専属的な許可を受けて建築されたもの。つまり当初は特定の人(建築許可を受けた本人やその家族)しか居住できない目的で建てられた家屋です。
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建築後10年以上が経過し、その間継続して都市計画法の基準に適合して利用されてきたもの。転売目的で許可だけ取得するような悪用を防ぐ観点から、「10年以上適正に利用された既存建物」という基準が設けられています。
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現在空き家であることが市町村によって確認されているもの。実際に1年以上居住者がいない住宅など、明確に空き家状態であることが条件です。
一方で、以下の住宅は対象外となります。
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区域指定内の住宅
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昭和46年3月15日(線引き日)以前からの既存住宅(もともと許可不要)
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相続以外の所有権移転が済んでいる住宅
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店舗併用住宅(店舗主用途)
手続きの流れ:用途変更申請のプロセスと必要書類
市街化調整区域内の空き家を「誰でも住める住宅」にするためには、空き家確認 → 都市計画法42条・43条の建築許可 → 建築確認申請という段階を踏みます。以下が具体的な流れです。
1. 相談・事前確認
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相談先:那珂市建築部都市計画課や不動産業者
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所有者(または相続人)、代理人はまず市役所の都市計画課へ相談し、対象建物が要件を満たす「空き家」かどうかを確認します。
2. 空き家確認申請
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都市計画課が現地・資料を審査し、条件に合うと認められた場合、「空き家確認書」が交付されます。
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添付書類の例:登記事項証明書、公共料金の停止を証明する書類、最後の居住者の除票、位置図・現況写真など。
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確認書は交付日から6か月間有効です。
3. 都市計画法42条・43条の建築許可申請
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空き家確認書を添付して、開発指導室に申請します。
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許可要件の違い
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空き家特例の場合
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資格要件なし
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自己用住宅でなくても可(非自己用=賃貸・投資利用も可能)
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包括承認基準4の場合(従来の農家住宅や分家住宅など)
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資格要件あり(原則、農家や親族)
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自己用住宅のみ可
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賃貸利用は不可
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→ 空き家特例を使うことで、これまで認められなかった 「非自己用」や「投資目的」での活用が可能になります。
4. 建築基準法上の手続き
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許可が下りた後、居住開始前に増改築や用途変更を伴う場合は建築確認申請が必要です。
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例えば古民家をそのまま住居として使うなら不要ですが、大規模リフォームや用途区分(住宅→店舗等)を変える場合は確認が必須です。
5. 契約・入居
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許可を得た建物は、売買契約や賃貸契約が可能になります。
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不動産業者による仲介が活用されます。
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入居後は、地域住民の一員として生活することが期待されます。
空き家特例のメリット
所有者にとって
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空き家を合法的に市場に出せる
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維持費・固定資産税の負担軽減
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売却・賃貸による収益化
移住希望者にとって
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市街化調整区域でも住まいが確保できる
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農村部でのスローライフやテレワークに最適
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比較的安価にマイホームを得られる
地域にとって
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空き家の減少で景観・治安が改善
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新しい住民を迎えることでコミュニティ維持
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移住促進や地域活性化につながる
注意点:制度利用上の課題と留意すべきポイント
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所有者が申請する必要がある
用途変更は現所有者(または相続人)が行わなければならず、許可を得ないまま売却すると「再建築不可」に近い扱いになる恐れがあります。売却前に必ず申請しましょう。 -
建物の状態確認が重要
古い空き家は耐震・断熱・設備面で問題がある場合が多く、用途変更後に住める状態かチェックが必要です。リフォーム補助金が使えるケースもあります。 -
生活インフラの制約
調整区域では水道・下水道・公共交通が未整備な場所もあります。井戸水や浄化槽、車移動前提の生活などを想定して準備しましょう。 -
地域との関係づくり
新しく住む人に地域が戸惑う場合もあります。地元自治会への加入や地域行事への参加など、円滑な関係づくりが大切です。 -
再建築は原則不可
特例は「既存建物を活用する」制度であり、老朽化して取り壊した後に新築できるとは限りません。将来の計画も考えたうえで活用する必要があります。
他自治体の動きと那珂市の特徴
空き家特例は全国的に広がりつつあります。例えば埼玉県や愛知県でも同様の制度を導入し、民宿や移住者向け住宅として空き家を活用する事例が出ています。
那珂市の特徴は、条例に基づいて明確な基準と確認手続きを設けている点。安心して空き家を取引できる体制が整っているといえます。
空き家特例制度は、単なる規制緩和ではなく、空き家を地域の財産に変えるチャンスです。所有者にとっては資産活用の道が開け、移住者にとっては新しい暮らしの選択肢となり、地域にとってはコミュニティ維持につながります。
もし市街化調整区域に空き家をお持ちであれば、ぜひこの制度を活用し、眠っていた資産を「生きた住まい」として再生させてみませんか?
空き家特例を活用した実際の事例
実際に空き家特例を活用した成功事例をご紹介します。
那珂市近郊では、農業を営んでいた世帯が暮らしていた住宅が長期間空き家となり、老朽化や雑草の繁茂が進んでいました。従来の制度では第三者が居住することはできず、売却も困難な状況でした。しかし空き家特例の導入により、都市部から移住を希望していた若い夫婦が購入。耐震補強や断熱リフォームを行い、古民家の趣を活かしながら快適な住宅へと再生しました。ご夫婦はテレワークを中心に仕事を続けながら、子育て世帯として地域に定住。自治会活動や地域行事にも参加し、集落に新しい活気をもたらしています。まさに「空き家が地域資源へと生まれ変わった」好例です。
また別のケースでは、分家住宅として建てられた空き家を二拠点生活に活用する事例もあります。都市部在住の家族が週末だけ農村に滞在し、地元農家の手伝いや自然体験を楽しむ拠点として再利用。空き家が「週末移住」や「セカンドハウス」としての役割を果たしています。
さらに近隣自治体では、空き家をリノベーションして民泊施設や小さなカフェに転用する事例も登場。観光客や移住希望者を呼び込み、地域交流の拠点となっています。こうした多様な活用は、空き家特例が単なる住宅活用にとどまらず、地域の未来を形づくる新しい可能性を秘めていることを示しています。
迷ったら、那珂市にある「住宅市場」にご相談ください
私たち「住宅市場」では、この空き家特例を活用した不動産売買・賃貸をサポートしています。
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売却希望者向け:空き家確認や用途変更申請のご相談から、売却活動までトータルで支援。
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購入・移住希望者向け:市街化調整区域内でも合法的に住める物件をご紹介。リフォーム・リノベーションのご提案も可能。
「制度は知っているけれど手続きが難しそう…」という方こそ、専門知識を持つ不動産会社にご相談ください。
弊社はお客様第一に考え誠実にサポートをおこない、お客様のご要望にお応えします。
「住宅市場」は、茨城県那珂市を中心としたエリアで活動する地域密着型の不動産会社です。
まずはお気軽にご相談ください。
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